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早期教育について

間もなく春がやってきます。春はいろいろなことを始める季節といえます。小さい子どもには、何か習い事を、と考える方もいるでしょう。いわゆる早期教育をさせようかと保護者の方が思うのです。他方、そう思いつつも、年齢相応よりも早い教育をすることの是非が分からず躊躇してしまう方もいらっしゃると思います。本記事では、早期教育の定義から効果的に早期教育を行うために必要な観点を、経済学の最新研究の見解から導いてご紹介します。

間もなく春がやってきます。
春はいろいろなことを始める季節といえます。
小さい子どもには、何か習い事を、と考える方もいるでしょう。
いわゆる早期教育をさせようかと保護者の方が思うのです。
他方、そう思いつつも、年齢相応よりも早い教育をすることの是非が分からず躊躇してしまう方もいらっしゃると思います。
本記事では、早期教育の定義から効果的に早期教育を行うために必要な観点を、経済学の最新研究の見解から導いてご紹介します。

目次

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早期教育とは

早期教育の意味を事典から引用してみましょう。
世界百科大事典第2版には、

「教育の始期として常識的に考えられている年齢よりも早期に教育を開始することにより,教育効果を高めようとする試み。早教育ともいい、英才教育、才能教育とほぼ同義に使われることもある」


とあります。

また、百科事典マイペディアにも、

「ある年齢にあった学習内容とされているものを、それ以前の児童により早く学習させて教育効果を高めようとする教育法。早教育とも。また英才教育同義に使われることもある」


となっています。

 ここから、早期教育は本来習うだろうという時期から前倒して始めることで、習う子どもにとって効果的な成果を収めさせようというもの、であることが分かります。



早期教育の種類

では、具体的に早期教育としてよく取り入れられているものは何でしょうか。
日本で中心に取り上げられているものを以下順に説明していきます。

まず、「超早期教育」が上げられます。
大脳などに刺激を与えるような活動を通じて行う胎児乳児の教育を特徴としています。
ソニーの創業者、井深大氏が、1969年に財団法人幼児開発協会を設立して胎児や新生児の持つ高い潜在的能力に注目したことが嚆矢とされています。

次に、多くの人がイメージする「就学前教育」です。
学校教育を受ける前に、学校で習うであろう文字の読み書き、計算、外国語などの教育を習わせることを指します。
特に、英語を早期に行うことで、将来の得意科目になってくれればという教育は人気です。
それから、特定の「芸術・体育教育」を早期に開始することも、広義には就学前幼児教育に入るでしょう。
この分野を習得させたい理由は「臨界期」を意識したものといえます。
たとえば、音楽教育を幼児期に受けさせることで音感などを育てることは、この時期に学ばせないと可能性が閉ざされてしまうと考えて行うということです。

最後に、小学校以上の早期教育にも触れておきます。
これは、「1~2年先取りして学習」する進学塾などに顕著です。
進学塾ではなくても、たとえば公文式など自身のペースで学習教材を進められる形態の教育機関を利用していれば、自然と行われているものと言えます。
その意味では、あまり早期教育の意識なく、当人が退屈しないレベルの教育を受けているものと考えられるものです。

本記事では、以下、早期教育の中心である「就学前教育」を念頭に話を進めます。


早期教育の注意点

さて、以上解説してきた早期教育ですが、興味をもって少しでもインターネットで情報収集してみればお分かりになりますが、欠点を示唆する内容が散見されます。
その内容は、

①教育の受け手である子どもに本当に効果があるのか、
②効果が怪しいだけでなく悪影響ではないのか、
③保護者が安心したいに過ぎないのではないか、


に大別できるようです。

①は、たとえば右脳教育を謳う教育機関が多いが科学的根拠が乏しいという指摘だったり、一つの言語を覚えて思考力など脳の総合的な発達を促す時期に二言語が混ざり混乱するという内容だったり、障がい児向けに効果があっただけの療法を「健常児」に用いているが効果は保障されていないだったり、その批判される内容は多岐に渡ります。
ただ、はっきりしているのは、科学的に効果があると言えない(あるいは、有害なのでは)という指摘がなされているということです。

②は、下手に早期教育を習うことがもたらす、たとえば保護者への期待に過剰に応えようとしてしまう懸念など子どもの人格的な発達面に与える悪影響や、早期教育で特定の部分を延ばすと統合的な発達を妨げてしまう、というものに代表されます。
遺伝的にプログラムされた発達を無理やり歪めてしまうのは危険との見方が根底にあります。
②は、子どもの心身の総合的な発達に照らし悪影響を指摘しているのです。

③は、少子化と情報化がかけ合わさり、育て方に悩む一方で、様々な子育て方法があることで混乱し、結局周りに流されたり、「声の大きい」(喧伝されている)習い事をしたりすることで、「安心」しようとしているのではないかという指摘です。
民間企業にとっては、この分野に進出でき潤うので理想的です。
東京大学(当時)の汐見稔幸氏は、中央教育審議会という国の教育方針を決める会議で、「親の自信喪失」と「企業戦略」という言葉で同趣旨を述べています。
つまり、早期教育が必要だと「思わされている」に過ぎないという立場が③です。


本当に早期教育の効果はないのか

このように捉えると、やはり早期教育は効果の根拠乏しく、そればかりか心身の悪影響を生じさせますから止めておこうと結論しがちです。
しかし、最近、日本でも紹介されているアメリカの研究に基づくと、そのような結論はやや早合点かもしれません。

というのも、やはり早期教育は効果が大きいからです。
詳しい記述は、『幼児教育の経済学』に譲りますが、本記事に関係ある主張を押さえますと、次の3点となります。

第一に、ノーベル経済学賞を受賞しているヘックマン教授らの研究によると、「質の高い就学前教育」は、就学後の手厚い教育よりも教育の投資効果が高い(つまり、早期教育を行ったほうが良い)といえるということです。
第二に、投資効果が高いとは、将来の学歴や年収、健康などいわゆる「社会的成功」に関係する点において、良いパフォーマンスが見られていることを意味します。
第三に、習った内容(学力的なもの)は就学後に習う子とすぐに差がなくなるものの、非認知能力(社会性がある、意欲がある、忍耐強いなど)が磨かれていたために、将来的なパフォーマンスに貢献しているとしました。

 つまり、早期教育は、子どもの非認知能力形成に資するわけです。
私たちは、早期教育の効用を、習ったことが実際できるし、習っていない子より長い期間アドバンテージを保てるのだという理解ではいけないようです。
そうではなく、習い事を通じ、いわゆる子どもに「社会的成功」に必要な人としての「生きる力」のようなものを育むつもりでいることが必要と言えます。

 ところで、ヘックマン教授らの研究は「ペリー幼稚園プログラム」を受けた子どもと、そうでない子どもの何十年にも渡る追跡調査で明らかにしました。
そして、この教育プログラムは、修士号まで持っている幼稚園の先生(児童心理学の専門家)1人につき6人に読み書きや歌などを教えると同時に、毎週1.5時間家庭訪問し、保護者に子どもへのかかわり方を「やってみせる」ことを特徴にしていました。
このことは、次の示唆を生みます。
すなわち、早期教育は、よく訓練された専門的な人と贅沢に接すること、保護者も一緒になってその輪に入って協力する必要がある、ということです。
そうした教育する側とされる側である子どもとの「触れ合い」が大切だということです。

 そもそも、教育は経済学では「関係財」という概念で語ることができます。
これは、神戸大学の鈴木純氏が第一人者として研究されている新しい分野で、日本福祉大学の宮園啓介氏も教育分野に当てはめています。
いわく、単なるサービスをする側とされる側に分かれるサービスではなく、両者の関係性の中でサービスが生産され消費されるものだという考えです。
そうであるなら、先に述べた「教育する側とされる側の触れ合いが大事」なのは、ある意味当然かもしれません。
「関係性」を作り出すことで満足できる学びができるわけです。


効果的な早期教育とは

ここまで述べてきたことを使って、効果的な早期教育を考えましょう。

まず、早期教育において学ばせる内容をあまり追求しなくて良いということです。
学ぶ内容は、就学すればいずれ就学後に学んだ子どもと差はなくなるかもしれないものだからです。
とはいえ、子どもがワクワクと前向きに取り組もうとしているものを選ぶことは後で述べる「関係性」の構築にも必要となります。
とりあえず、子どもが興味を持っていることにチャレンジさせることは問題ないでしょう。

次に、教育する側に専門性があるかと、熱心に子どもや保護者と関わろうとするかについては、重視しなければなりません。
したがって、考えている教育機関を事前に見学し雰囲気を見たり、どのように保護者と連携を築こうとしているかだったりをしっかり確認する必要があります。
触れ合いが多く、非認知能力の構築に資するか否か判定せねばなりません。

なお、「口コミ」はあまり当てにならないでしょう。
なぜなら、ある人には良い関係が築けても、自分の子どもとは違うかもしれないからです。
それよりは、子どもの態度を大事にしましょう。
習い事に行きたがるか、教える人に会いたがるか、教える人に人間的な興味を持っているか、が大事になるでしょう。


まとめ

いかがでしたか。
経済学の見解を使うと、学ぶ内容をあれこれ考えなくてもいいと分かります。
非認知能力が高まる営みがなされそうかを考えましょう。
また、子どものワクワクにしたがって習わせるときに、教える側の姿勢とそれを受けての子どもの反応(もちろん保護者自身とどう絡んでくるのかも含みます)をしっかり確認することが大事です。
「通わせっぱなし」「任せっぱなし」は駄目なのだとなります。

どこに力点を置いて早期教育に臨めばいいかを、近年の経済学研究からお伝えしました。
参考になれば、望外の喜びです。

 

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